6月頃に住民税の決定通知書が手元に届きます。
保育料は住民税(区市町村民税所得割)をもとに算出されるのを知っていましたか?
3歳以上は保育料無償化になったとはいえ、2歳未満は認証保育所や認可保育園も有償です。
毎年10月に会社で提出している年末調整や年明けの確定申告を使って、住民税と保育料を少しでも減らす方法があります。
この記事を読むと以下のことがわかります。
・所得控除の種類や使い方 配偶者控除:普段は共働きで産育休により所得が少なくなった場合 医療費控除:出産や手術等を含め年間10万円以上の医療費があった場合 生命保険料控除:生命保険や年金保険への加入 地震保険料控除:地震保険への加入 小規模企業共済等掛金控除:iDeCoやマッチング拠出への加入 社会保険料控除:年金の追納、付加年金や国民年金基金への加入 ・ふるさと納税や住宅ローン控除などの税額控除は保育料に影響しない ・配当や株式等の譲渡益がある方が確定申告をすると逆に保育料が上がる可能性も
保育料の決まり方
保育料の決定方法
2019年の法改正により以下の子供たちの保育料が無償化となりました。
・幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳〜5歳児クラスの子供たち、
・住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスまでの子供たち
ただし、上記以外の0~2歳までは従来通り保育料が発生します。
保育料は各自治体によって異なり、東京都23区で最も人口の多い世田谷区は以下の通りで、各世帯の所得割課税額によって保育料が決定されます。
例えば所得割課税額が12,000円未満の世帯(表中のD1)は保育料が7,400円/月となります。
https://www.city.setagaya.lg.jp/theme/006/001/002/d00005744_d/fil/hoikuryouitirann.pdf所得割課税額とは
住民税における所得割課税額は「①所得金額ー②所得控除金額」の計算式で決定します。
①の「所得金額」は、例えばサラリーマンが給与を受け取った場合は、
「収入金額(額面) – 給与所得控除額 = 給与所得の金額」の計算式となり、
給与所得控除は収入に応じて自動的に計算される仕組みとなっております。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 | |
1,625,001円から | 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から | 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から | 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から | 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
②の「所得控除金額」は保険料控除や配偶者控除などたくさんの種類があり、自動的に計算されるものではなく、意識すれば金額を増やすことも可能です。
この「所得控除金額」を増やし所得割課税額を下げることで保育料を下げることが可能です。
所得控除の種類と使い方
所得控除の種類
所得控除はたくさんの種類があります
- 雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
これらの所得控除のうち以下の控除などは、自身でコントロールしやすく意識して増やすことが可能です。
・配偶者控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・医療費控除
・寄附金控除(ふるさと納税等を除く)
所得控除にならないもの(保育料に影響しないもの)
所得控除と似た言葉で「税額控除」というものがあります。
住宅ローン控除やふるさと納税などがそれに当たりますので、これらの控除をいくらうけたところで保育料には影響しません。
配偶者控除(配偶者特別控除)
共働き夫婦の場合で、申請漏れがちなのが配偶者控除です。
出産に伴う産休・育休により妻のその年の所得が133万円以下(給与所得のみであれば年収201万円以下)になった場合は、忘れずに申請しましょう。
生命保険料控除
保険としてではなく、生命保険料控除を目的に加入する場合、以下のような保険を候補にされても良いと思います。
・明治安田生命「じぶんの積立」
・会社の団体保険「拠出型企業年金保険」
どちらもいわゆる積立型の保険で、解約時の払い戻し金が100%以上になるのが早い商品のため、生命保険料控除を目的に加入する商品として選択肢にあげてよいと思います。
なお、拠出型企業年金保険は、基本的には給与天引きにより保険料を毎月納めることになり、年末調整時に別途で書類を用意せず自動的に控除されることになるため、申請漏れを無くすことができます。
関連記事会社の福利厚生「持株会・財形貯蓄・団体保険」加入するべきか?メリットと加入基準を紹介
地震保険料控除
地震保険料控除とは、地震保険に加入し地震保険料を支払った年に受けられる控除です。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
---|---|---|
地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 |
地震保険は火災保険を契約していないと契約できない保険で、地震保険単独では契約できません。
また、保険料は建物の住所や構造、契約年数によって値段は異なりますが、どこの保険会社で契約しようとも同じ金額に設定されています。
地震保険の場合は2年以上の契約期間になるケースが多いと思います。最初に全額支払いした場合は最初の年に全額が保険料控除になるのではなく、毎年「一括払保険料÷ 保険期間 (年)」の保険料控除となります。
例:5年間の地震保険10万円を、最初に全額払った場合は毎年2万円分の地震保険料控除ができる
関連記事火災保険は事前にハザードマップを用意してから契約の打ち合わせに挑む
小規模企業共済等掛金控除
あまり聞き馴染みのない言葉ですが、iDeCoやマッチング拠出に加入し支払った全額が小規模企業共済等掛金控除となります。
マッチング拠出は給与天引きで掛け金が拠出されているので、年末調整時に別途で書類を用意せず自動的に控除されることになるため、申請漏れを無くすことができます。
iDeCoは、「小規模企業共済等掛金払込証明書」というものが10月頃に金融機関から送られてきますので忘れずに申請しましょう。
関連記事企業型DC非加入者必見!iDeCoは年払いに設定して手数料を抑える!
社会保険料控除
学生納付特例の追納
20歳をすぎてもまだ学生である場合は、学生納付特例により保険料の納付が猶予される制度があります。
その猶予されていた保険料について、その後10年以内であれば保険料をさかのぼって納めること(追納)ができ、追納した分をその年の社会保険料控除として適用することができます。
付加年金・国民年金基金
自営業・フリーランスの方は付加年金や国民年金基金へ加入することができ、その拠出した金額も社会保険料控除にすることができます。
付加年金は金額が400円/月であること、納付・やめる際の手続きが容易です。
国民年金基金は性別・年齢により掛金が変わり、1口数千円〜加入することが可能です。ただし、iDeCoと合算して上限が設けられる、途中で停止・脱退することは想定されていないなど制度が複雑です。
医療費控除
1年間の自分または生計を共にする親族のために支払った医療費を合算した金額が10万円以上の場合に申請できます。
なお、総所得金額等が200万円未満の場合は医療費が10万円以上ではなく総所得金額等の5%以上であれば控除を受けられます。
出産に伴う費用は簡単に10万円以上の自己負担額となりますので、出産年はこの制度を使える可能性が高いと思います。
その際、出産した本人でも配偶者でも、生計をともにしていればどちらの医療費控除で申請してもかまいません。
株の配当や譲渡益がある場合は確定申告しないほうがよいケースも
サラリーマンをしながら株式で所得を得ている方もいますよね?
「特定口座・源泉徴収あり」を選択している場合、確定申告をしなければ株式で得た配当や譲渡所得は保育料決定の計算で使用する課税所得に加算されずに計算されます。
ただし、確定申告した場合は配当所得や譲渡所得は、保育料算定のための課税所得に加算されてしまいます。
株で所得を得ている方は、年末調整だけで済ませたほうがよいのか、確定申告をしたほうがよいのかはかなり複雑に絡み合っているので、事前に計算・問い合わせのうえ決めましょう。
例えば、10万円以上の医療費を払ったため医療費控除を受けるために年末調整だけでなく、確定申告をしたが、株の配当・譲渡所得も課税所得に加算されてしまい、医療費控除で減った分よりも保育料があがって損するというケースもありえます。
なお、「住民税の申告不要制度」というのが2022年以前は使用できたため上記懸念はありませんでしたが、税制改正により2023年分の確定申告より所得税と住民税の課税方式を一致させる改正がなされ使えなくなりました。
「特定口座/源泉徴収あり」が必須
証券口座で「特定口座源の源泉徴収あり」を選択している場合、確定申告する際以下の3つの中から選べます。
①申告しない
②申告分離課税で申告する
③総合課税で申告する
上記のうち②と③はいずれも保育料の算定に影響してしまいます。
確定申告する際は、申告不要制度(確定申告の際に入力しなければよいだけ)を活用し特定口座の配当所得・譲渡所得を記載しない方法を取るのも手です。
「①申告しない」で確定申告を提出してしまった場合は、後から②・③へ修正の変更をすることはできませんのでご注意ください。
児童手当の所得制限の計算は異なる
2023年6月現在児童手当の所得制限撤廃について議論になっていますが、児童手当も保育料の算定と同じように所得控除を増やすことで所得制限を抑えることができます。
ただし、児童手当は対象となる所得控除が以下のようにかなり限定的となっており、生命保険料控除や地震保険料控除などが加味されない制度となっておりますのでご注意ください。
・医療費控除
・雑損控除
・小規模企業共済等掛金控除額
・障害者控除
・寡婦(夫)控除
・勤労学生控除
高校生等への修学支援も保育料と同様の考え方
高等学校等就学支援金制度があり、こちらも住民税の「所得割課税額」をベースに所得要件が決定されております。
保育料の引き下げと同様にして所得控除を活用しましょう。