住宅ローン控除(減税)が改悪される?されない?
ちまたでいろいろなニュースが発信されていますので、この記事を読んでいただいて以下の内容を理解してかえっていただけると思います。
・住宅ローン控除の現在と改悪案の違い ・住宅ローン控除の改定で令和4年(2022年)入居分から大きく複雑化 ・住宅ローン控除は令和6年(2024年)・7年(2025年)入居分から改悪
住宅ローン減税2022年度(令和4年度)税制改正大綱
12月10日税制改正大綱とりまとめ
税制調査会は「成長と分配の好循環の実現」「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」等を柱に令和4年度税制改正大綱をとりまとめました。
住宅ローン控除は4年間延長、省エネ性能等の高い認定住宅について借入限度額を上乗せし、新築住宅については控除期間を13年とすることとしています。内容が大きく複雑化しながら改悪されているのに加え、所得税で控除しきれなかった分を住民税から控除する制度も縮小されています。
税制改正大綱の具体的内容
借入限度額や控除期間は、居住した年・居住する住宅の質によって左右されることとなり、正直、かなり複雑な制度となる予定です。
令和4・5年から令和6・7年と段階的に改悪されることとなります。
居住年 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | |
認定住宅 | 令和4・5年 | 5,000万円 | 0.7% | 13年間 |
ZEH水準 省エネ住宅 | 令和4・5年 | 4,500万円 | 0.7% | 13年間 |
省エネ基準 適合住宅 | 令和4・5年 | 4,000万円 | 0.7% | 13年間 |
上記以外 | 令和4・5年 | 3,000万円 | 0.7% | 13年間 |
居住年 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | |
認定住宅 | 令和6・7年 | 4,500万円 | 0.7% | 13年間 |
ZEH水準 省エネ住宅 | 令和6・7年 | 3,500万円 | 0.7% | 13年間 |
省エネ基準 適合住宅 | 令和6・7年 | 3,000万円 | 0.7% | 13年間 |
上記以外 | 令和6・7年 | 2,000万円 | 0.7% | 10年間 |
住民税からの特別控除も改悪
住宅ローン減税は、所得税から控除しきれなかった分を住民税から控除する制度となっておりまして、従来は上限136,500円が住民税から控除できました。
しかし、令和4年から令和7年に居住したものについては、上限97,500円に減額になるとのことです。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除の制度ができた背景
住宅ローン控除そのものの歴史については、1978年頃まで遡ることになります。
現行の住宅ローン控除制度と同様の制度になったのは2014年に消費税が5%から8%に増税がなされた際です。
住宅のように消費税の影響が大きく、消費の落ち込みを抑えるために住宅ローン控除を拡大して、今の住宅ローン控除の形になりました。
財務省の以下の資料が参考になるかと思います↓
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/063a.pdf
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除は、家を買うために住宅ローンを借入した場合に、住宅ローン残高に応じて所得税が年末調整や確定申告によって控除される制度です。
概要については”すまいの給付金”のサイトにわかりやすく記載されております。
住宅ローン控除についての定義は国税庁のホームページに記載があります。文字が多く難しいので、詳細を確認したい人以外はアクセスしなくても良いと思います。
問題になっている住宅ローン控除の逆ザヤとは
住宅ローンの借入金利は、金融機関や変動金利or固定金利によって異なりますが、変動金利では最近では0.4%〜0.8%程度だと思います。
1%以下の金利で住宅ローンを借入している人は、住宅ローン控除が適用されることで、逆に得してしまうことを逆ザヤと言っております。
例えば、4,000万円を35年間金利0.4%で借り続けると、支払利息は約280万円となります。ところが住宅ローン控除を適用すると、約350万円の所得税・住民税の控除ができてしまいます。
上記の例では住宅ローンを借りることで、約70万円儲かってしまうことになってしまい、今、この住宅ローン控除の仕組みが問題であると指摘されています。
住宅ローン控除の改定案
2021年税制大綱「住宅ローン支払利息分を上限にする」
2020年12月に発表された2021年税制大綱には、「住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を2022年税制改正で見直す」とされております。
国土交通省の案「控除額を1%から0.7%にして10年から15年にする」
国土交通省としては、住宅の落ち込みを避けるため、控除率を縮小する代わりに控除期間を15年にする案を検討しているとのこと。
斉藤鉄夫国土交通相は11月19日の記者会見で、住宅ローン控除率を一律に引き下げる一方、従来と同程度の支援規模を確保するため、トータルとしては同程度の支援規模になることを確保するため、控除期間を延長することを要望しているとのことです。
以下全文を記載します。
“住宅ローン減税は、非常に経済波及効果の大きい住宅取得促進策の柱として、我が国経済の回復を牽引していく上でも極めて重要であると考えています。
足元での住宅着工は、いまだ回復途上の段階にあることに加え、世界的な資材需給の逼迫等により住宅資材価格が急騰しています。
ウッドショックと言われるものです。
民間住宅投資が経済全体の足を引っ張る兆候も見受けられます。
一方、住宅ローンの年末残高の1%を控除する住宅ローン減税の仕組みについて、会計検査院より不必要な借入れを助長するおそれがあるとの指摘がありました。
これらを踏まえ、控除率等のあり方を来年度の税制改正において見直すこととされています。
国土交通省としては、不必要な借入れを抑制するため、控除率を住宅ローン金利の平均的な水準を勘案しつつ一律に引き下げる一方、従来と同程度の支援規模を確保するため、トータルとしては同程度の支援規模になることを確保するため、控除期間を延長することを要望しています。
今後の税制改正プロセスにおいて、与党税制調査会で議論されますが、国土交通省の主張を理解していただけるよう、各方面に働きかけていきたいと思っています。”
国土交通省12月6日大臣会見
斉藤鉄夫国土交通相は12月6日の記者会見では平行線のような内容を発言されています。
以下全文を記載します。
”住宅ローン減税は経済波及効果の大きい住宅取得促進策の柱として、我が国経済の回復を牽引して行く上でも極めて重要です。
足元での住宅着工は未だ回復途上の段階にあることに加え、世界的な資材需給の逼迫等により住宅資材価格が急騰しており、民間住宅投資が経済全体の足を引っ張る、そういう兆候も見受けられます。
一方、住宅ローンの年末残高の1%を控除する住宅ローン減税の仕組みについて、会計検査院が不必要な借り入れを助長する恐れがあると指摘していること等を踏まえ、控除率等のあり方を来年度の税制改正において見直すこととされています。
その議論が今、与党税調の中で繰り広げられていると認識しています。
国土交通省としては、不必要な借り入れを抑制するため、控除率を住宅ローン金利の平均的な水準を勘案しつつ一律に引き下げる一方、トータルとして従来と同程度の支援規模を確保するため、控除期間を延長することを要望しています。
今、与党税調の中で、これもマル政項目の中に入って議論がされていますが、私たち国土交通省、この考え方に基づいてしっかりと主張しているところです。
頑張りたいと思っています。”
12月6日政府与党最終調整案
住宅ローン控除を0.7%に引き下げたうえで、残高の上限も4,000万円から3,000万円に下げる案を軸に最終調整に入ったことが、各社の取材でわかったとのこと。
調整案では、4年間延長したうえで、控除率を0.7%に引き下げて、2023年末までの入居については、残高の上限を3,000万円に、最大減税額を年間21万円とする。
期間については検討中。
歴史的な低金利が続く中、税金から差し引かれてもらえる控除額が、支払うローン利息よりも高くなる「逆ざや」と呼ばれる現象が問題視されていることをふまえたもので、対象者の合計所得金額も3,000万円以下から、2,000万円以下に引き下げる案。
各社から報じられておりますが、NHKのWEBページを参考に掲載しておきます↓↓
国土交通省12月10日大臣会見
住宅ローン減税について、控除率が一律0.7%に引き下がる一方で、控除期間が原則13年に延長されるとの報道も出ており、国土交通省は控除率を0.7%、控除期間を15年以上とすることを元々要望していた件について以下のように会見で発言されております。
”与党税制改正大綱が今日とりまとめられる見込みです。
国土交通省から要望した「新型コロナウイルス感染症の影響からの経済回復に向けた躊躇なく機動的な対応」、こういう要望をパッケージで出しましたけれども、概ね必要な措置が盛り込まれるものと承知しています。
今、御質問のありました住宅ローン減税については、中間層における良質な住宅の取得が促進され、内需の柱である住宅投資の喚起を通じ、経済再生に貢献することを期待しています。
また、商業地等に係る固定資産税の負担軽減措置については、緊急事態宣言等を受け、厳しい状況にある事業者の経済活動や経済回復が進むことを期待しています。
さらに、航空機燃料税の軽減措置については、航空ネットワークの維持と今後の航空会社の設備投資等の下支えにつながることを期待しています。
概ね、我々国土交通省が要望したことが、その趣旨も含めて盛り込まれたのではないかと評価しています。”
住宅省エネ2023キャンペーン
以下のような住宅省エネ化を支援するために新たに創設された3つの補助事業の総称です。
・住宅の断熱性の向上
・高効率給湯器の導入
最大100万円補助!新制度”こどもみらい住宅支援事業”創設※終了しました
住宅ローン控除の改悪だけが報じられていますが、実は裏で新制度”こどもみらい住宅支援事業”という、子育て世代・若年夫婦の住宅購入を補助する制度が創設されております。
詳細は別の記事でも記載されておりますので併せて読んでみてください。
関連記事【最大100万円補助】子育て世代と若者夫婦の省エネ住宅取得を優遇!
ご参考:税制改正要望
各省庁からの要望は以下のように出ているようで、
国土交通省の住宅ローン減税だけではなく、自動車重量税や金融庁の保険料控除の拡充などに関する身近な内容で、いくつか気になるものがすでにありますので確認してみてください↓